テーマ 戦後教育における1950年代とは
趣旨
日本が「戦後」を迎えて79年が経とうとしています。「戦後教育」と一言でいっても、クローズアップする時代や事象によって浮き上がる問題が異なり、もはや教育の通史では一つの歴史を形成する時代としてまとまった厚い内容が詰まっている対象といえます。にもかかわらず、教育学の他領域による研究蓄積に比べて、教育史研究者による研究蓄積が決して十分にあるとはいえない状況が今日でも続いている対象でもあるのではないでしょうか。
これまで日本教育史研究会のサマーセミナーでは戦後50年にあたる1995年(第14回)とつづいて1996年(第15回)にも戦後教育をテーマに掲げています(『日本教育史往来』No.98(1995年11月10日)、No.104(1996年11月11日)より) 。少し振り返ってみますと、第14回のテーマは「戦後教育史像の再検討―戦後50年の地点から―」と据えられ、1日目には「総括討論 戦後50年と教育史の諸問題―日独の比較から」2日目には「研究セッション 戦前・戦時・戦後の天皇制」が行われました。
第15回は第14回のテーマを引き継ぎ「戦後教育史における1950年代の再検討」という共通テーマが据えられ、終戦から51年を迎えて日本教育史研究はその「通史」を構築し得ているのか、「憲法・教育基本法体制の成立」「反改革=逆コース」「安保体制下での能力主義教育政策」という定式化された枠組みの中に止まっているのではないか、という問題意識のもとで(1)戦後教育改革研究の方法論をめぐる論争を考えること、(2)戦後教育史の枠組みを再検討すること、(3)1950年代の研究の必要性・重要性の確認と、従来のパラダイムの再検討を行うことが目標として掲げられました。感想等の記録を辿るに、戦後教育史の枠組みや1950年代の位置づけについて非常に濃密な議論が展開されたものと思います。会員のみなさまのなかには、懐かしく当時の議論を思い起こす方もいらっしゃるのではないかと思います。
さて、それからおよそ30年が経とうとしていますが、戦後の教育史研究としては、まとまった研究成果として2022年3月に本会会員も名を連ねる野間教育研究所の「1950年代教育史」研究部会より『1950年代教育史の研究』(野間教育研究所紀要第64集、野間教育研究所)が刊行されました。ここでは、教育史研究として今日では60年代、70年代以降の事象が研究対象となるなかで、様々な事象を実証的に時代の全体状況に位置付けること、さらに50年代の歴史的性格を明らかにしていく必要性が高まっていることを指摘し、1950年代を短期間で大きな変質を伴った「過渡期的」性格と位置づけ、教育のあり方において戦前から続いてきた事象と戦後新たに始まった事象がどう姿をかえて60年代に引き継がれていったのかを探ることが意識されています。こうした問題意識を共有しつつ、今回のサマーセミナーでは他領域の研究との対話を通して、あらためて日本教育史研究の立ち位置から戦後教育における1950年代について考えてみたいと思います。
教育学の研究領域のなかでも戦後教育を対象とする豊かな研究蓄積を有する教育行政学、教育社会学の研究者をお招きし、それぞれの研究領域において1950 年代をどう捉えるのか、どう捉えられるのか、1950年代の性格や特質についてご報告いただきます。他領域の研究から学び、あるいは比較を通して、あらためて日本教育史研究として問い直すこと、さらに研究の手法や枠組みの違いを前提として意識しつつ、建設的な議論を構築できればと思います。昨年より対面でのサマーセミナーが復活しました。みなさまのご参加をお待ちしております。
日 時
8月10日(土)13時~18時(予定)
場 所
聖徳大学(千葉県松戸市岩瀬550)( 1号館3階1323教室 )
※対面開催です。
報 告 者
高橋寛人(石巻専修大学教授・横浜市立大学名誉教授)
相澤真一(上智大学教授)
コメンテーター 米田俊彦(お茶の水女子大学名誉教授)
参加費 :1000円(資料代など)
懇親会 : 事前申込(7月31日まで)
*『日本教育史往来』下記QRコードもしくはURL(https://forms.gle/PUg9rPKSfhnWN5vb7)よりお申込みください。
*懇親会費は7000円程度を想定していますが、貸切の関係上人数により変動します。 *お問い合わせ先:大多和雅絵 電子メール m.otawa@kawaguchi.ac.jp