2018年度

テ ― マ:攻囲される子どものからだ ―帝国日本の「衛生」問題―

★2018年度サマーセミナーのチラシはこちら

■趣  旨
昨年度のサマーセミナーでは、生活環境が大きく変化した近世近代移行期において、人々の「身体観や身体感覚」がいかに「変容」を迫られたかについて検討しました。本年も引き続き、生身のからだとその捉え方に焦点を当てます。今回は対象時期を少し広げ、近代への移行期から近代全般を展望します。20世紀への転換期前後から、日本は戦争を経ながら「帝国」を形成しました。あらたな変革の時代のなかで、生身のからだと「こころ」とが巻き込まれ、まなざされ、のぞましい「規格」が絶えず生み出され、人々がその「規格」に取り込まれていきました。今回の課題としたいのは、ひとびとを攻囲し、様々なやり方を通して継続的に作用しようとする権力のあり方です。また、ひとびとが「規格」を取り込み、身体化し、世代を超えて「規格」を変化させながらも、学校や家庭を通じ「規格」の存在自体は継続的に再生産するという、受け取る側の主体性も見逃せません。

今回のセミナーでは、あらゆる場面においてからだと「こころ」を国家が管理しようとすることに関わる広範な問題を、「衛生」という手がかりから考えます。例えば身体検査などのような「検査」というありふれた事象を考えてみる時、誰が何の「検査」を何故行うのか、「検査」票の項目の変化など、権力やその思惑のみならず、他者への「清潔・不潔」観、支配された他民族に導入される「衛生」(観)など、「検査」だけでも実にさまざまな事柄の存在が交錯し、無視できないことに気づかせられます。

今年は、2006年のセミナー「教育史における身体と性」の成果も含み込みながら、同時に「帝国日本」の時代の被支配領域を日本教育史の議論の俎上に乗せるという側面では、2005年のセミナー「「朝鮮教育史」との対話」の経験も前提としています。「「朝鮮教育史」との対話」では、国内の研究であってもジェンダー史などとの「ディシプリンの懸隔」が大きかったという課題が指摘されました(『日本教育史往来』158号、2005年、2頁(復刻版614頁))。今回のセミナーは、こうした本会の蓄積を土台に研究状況の進展をふまえて、さまざまな分野の歴史をつなぎ合わせながら、「懸隔」を乗り越え新しい研究視角を切り拓きたいと考えます。

■日  時
2018年8月25日(土)午後1時30分~5時30分
8月26日(日)午前9時10分~午後12時30分

■会  場
立教大学池袋キャンパス(東京都豊島区西池袋3‐34‐1)
(1日目)本館2階1203教室
(2日目)11号館3階A301教室

■日  程
・8月25日(土)
<報告者>
七木田 文 彦(埼玉大学)
川 端 美 季(立命館大学)
<コメント>
石 居 人 也(一橋大学)

・8月26日(日)
<報告者>
金   湘 斌(台湾 高雄師範大学)
<コメント>
山 本 和 行(天理大学)
高 木 雅 史(中央大学)

<司 会>(両日とも)
高 野 秀 晴(仁愛大学)

■参 加 費
1000円(資料代など)

*1日目の夜に、懇親会を開催いたします。会場と会費は当日お知らせいたします。
*宿泊は各自で手配をお願いいたします。
*2日目(8月26日)のプログラム終了後に、衛生教育映画『百人の陽気な女房たち』(1955年、桜映画社製作)の上映会を開催します。上映時間30分程度ですので、お時間のある方はご参加ください。
*お問い合わせ先: 樋浦郷子
電子メール: hiura@rekihaku.ac.jp(@を半角に直してください)