2017年度

テ ― マ: からだを捉える

■趣  旨
教育史研究において「身体」に着目することの必要性はかねてより提起されてきた。本会においても2006年に「教育史における身体と性」をテーマにサマーセミナーが開催されている。「議論の拡散をおそれず(中略)さまざまな立場からの研究がクロスオーバーする」(『往来』No.162、2006年6月)ことが目指された当セミナーでは、とくにジェンダー、セクシュアリティ研究と渡り合う教育史研究の可能性が示された。このことが示すように、これまで「身体」に関する教育史研究においては教育史の「外」を常に視野に含みこみながら議論する必要性を示してきたといえる。しかし、当セミナー開催からも、すでに10年が経過する。そこで今回のセミナーでは、先行研究や前記セミナーで示された「広いレンジ」(『往来』No.164、2006年10月)を視野に入れた上で、「身体」をめぐる教育史研究がこの間にいかに深化したか(あるいはしなかったか)をめぐり、最新の研究成果を手掛かりに議論をしてみたい。

「身体」という、身近でありながらつかみどころのない対象を捉えるために、本セミナーでは、時代とテーマの絞り込みが必要と考えた。絞り込みにあたり、人々の「からだ」そのものをクローズアップしたいと考え、身体感覚や身体観が変容する局面に着目することとした。そして、その変容が顕著に見られた時代として近世から近代への移行期を選ぶこととした。近世から近代への移行にあたり、政治機構が変わった。こうした変革は誰の目にも見えやすい。しかしこれにともない、人々が否応なく被った身体感覚や身体観の強制的変容は、見えづらく、読み取りづらい。結果としてその存在の重要性に比べ、研究対象としては軽視される傾向があったのではないか。

儀礼を例にとるならば、敬意の表現の変容は著しい。立礼か座礼かそれ以外かということにとどまらず、服装、髪型、姿勢や言葉(声と文字)にも及ばざるを得なかった。そればかりでなく、キリスト教の流入、学校教育の拡大は音階や楽器の変容を通じ日本人の耳になじんだ音や声の風景をも一変させることを迫った。「からだ」をめぐる多様な論点の中から、儀礼や姿勢、音の環境をめぐる身体感覚の変容にかかわる議論を通じ、これまで見えづらかった領域の輪郭を浮かび上がらせてみたい。

■日  時
2017年9月3日(日)午後1時半~5時半 / 9月4日(月)午前9時~12時半

■場  所
九州産業大学 1号館7階大会議室(福岡県福岡市東区松香台2‐3‐1)

■日  程
・9月3日(日)
<報告者>
鈴 木 敦 史(びわこ学院大学)
藤 坂 由美子(鹿屋体育大学)
<コメンテーター>
白 水 浩 信(北海道大学)
<司 会>
高 野 秀 晴(仁愛大学)

・9月4日(月)
<報告者>
北 原 かな子(青森中央学院大学)
歌 川 光 一(昭和女子大学)
<コメンテーター>
鈴 木 理 恵(広島大学)
<司 会>
高 野 秀 晴(仁愛大学)

■参 加 費
1500円(資料代など)

*1日目の夜に、懇親会を開催いたします。会場と会費は当日お知らせいたします。
*宿泊は各自で手配をお願いいたします。
*お問い合わせ先 : 高野秀晴
電子メール : takataka@jindai.ac.jp(半角に直してください)