2010年度

テーマ: 教育史における天皇制を再び考えてみる

趣旨:

第一回日本教育史研究会サマーセミナーのテーマは、「教育史における天皇制」であった。それから、三〇年近く経過しようとしている。この間、社会の状 況は大きく変りつつある。一九八九年の学習指導要領改訂以降、それまで「望ましい」とされていた、学校儀式における「日の丸」の掲揚と「君が代」の斉唱 が、「指導するものとする」と、強制する事態になった。一九九九年八月には、「国旗並びに国歌に関する法律」が制定された。これにより、入学式・卒業式で 国旗、国歌の強制拒否の理由で処分された公立学校教員は、この十年で千名を超えた。さらに、二〇〇六年十二月には、教育基本法の「改正」が行われた。教育 勅語をはじめとする戦前の教育を否定することを目的として成立した教育基本法を「改正」することの意味は、当時の安倍首相による「戦後レジーム」からの脱 却を掲げた政策の一環であった。一九八二年当時に、「教育における天皇制」をテーマにした時点より、一層の保守化が進行しているように思われる。それは、 政権交代が行われた現在においても、大きな変化はみられない。改めて、近・現代教育の質と構造とを明らかにするひとつの重要なキー概念である「天皇制と教 育」について、議論する必要があるように思われる。
一方、教育史研究において、「天皇制」と教育をめぐり、注目すべき新しい業績が現れている。例えば、教育勅語発布以前の天皇の全国巡幸と学校、教育勅 語発布以降の勅語改訂論や不敬事件、一九三〇年代以降の天皇の神格化と教育、日本植民地における教育勅語、或は神社参拝、そして、戦後象徴天皇制の成立以 降の御真影や「日の丸」・「君が代」と学校などに関する諸研究が発表されている。しかし、これらの業績を横断するような議論の場は意外に少ないような気が する。今回のサマーセミナーでは、こうした研究動向を踏まえながら、報告者に皆さんに、新たな諸課題や枠組みなどを提供してもらい、再度、「教育史におけ る天皇制」の質を問う機会にしたいと思っている。

報告者
鈴木敦史(同志社大学・非常勤)
平田諭治(筑波大学)
須田将司(東洋大学)
樋浦郷子(京都大学大学院)
小野雅章(日本大学)

コメンテーター
広田照幸(日本大学)
渡部宗助(埼玉工業大学)

日 時:2010年8月17日(火) 午後1時半~6時
8月18日(水) 午前9時~12時半

場 所:日本大学文理学部(東京都世田谷区桜上水)

参加費:500円(資料代など)

*詳細については『日本教育史往来』6月号にてお知らせします。
*初日の夕刻よりで懇親会を開催いたします。会費・会場については、当日お知らせします。
*宿泊については、各自で手配をお願いします。
*連絡先 小野 雅章 電子メールqyr05632*nifty.ne.jp(*を@に直して送信して下さい)