2019年度

テ ― マ:歴史のなかの“いのち”を考える―失われた“いのち”の記憶をどう紡ぐのか―

趣  旨
“いのち”という言葉に対して、私たちは日々、必ずしも自覚的に過ごしているわけではありません。しかし一方で、その言葉の在り方を意識せざるを得ない出来事が、ここ何年かの私たちの日常に起きていることもまた事実です。地震や台風、大雨といった自然災害だけでなく、いじめや虐待などの子どもにまつわる悲しい出来事、さらには、国際情勢の緊迫化や間近に迫る超高齢化社会などを前にして、私たちは、自分だけでなく、家族や隣人の将来の在り方にも無関心ではいられなくなっています。そして、こうした課題の多くについて、教育がその対応を求められています。
このような現状を踏まえ、今回のサマーセミナーでは、如上の課題を包括的・横断的に捉える視点としての、“いのち”という言葉に着目します。これまでの教育史研究では、“いのち”をめぐる問題について、主に生殖や子育て、産育などの側面からの検討を積み重ねてきました。こうしたこれまでの研究の成果を受けて、前述のような現代の社会が抱える諸課題を踏まえた時、今回は “いのち”に関する「生」の側面とともに、その対極である「死」の側面にも光をあてたいと思います。失われた“いのち”が、これまで人々によってどのように受け止められてきたのか/こられなかったのか、さらには、今後私たちは、失われてゆく“いのち”に、どのように向き合ってゆかなければならないのかについて、具体的なテーマとして、災害に晒される“いのち”と、捧げられ祀られる対象としての“いのち”の二つの切り口から考えたいと思います。このような取り組みは、これまで、個別の領域のなかで論じられてきた成果を今一度その垣根を越えて再検討することにもなり、さらには教育史研究が現代的な諸課題にいかに向き合うことができるのかを問う上でも意義があるのではないかと考えます。
こうした二つの視点に関わる、失われた“いのち”とりわけ「死」の問題は、自らの意思を超えて迫られ、さらに多数の人々に及ぶものであり、それは当事者のみならず周囲の人々をも巻き込んで、「死後」に至っても、多くの者たちのこころを拘束し続けます。今回の試みを通して、戦災を含む災害による大量死をめぐって、そこで失われた“いのち”と失われてゆく“いのち”の記憶を、私たちがこれまでどう共有し、今後、どう紡いでいかなくてはならないのかを考えることが出来ればと思います。

日  時
8月24日(土)13時30分~17時30分
8月25日(日)9時30分~12時30分

会  場
大学サテライト・プラザ彦根 B・C教室(会場案内図参照)
(滋賀県彦根市大東町二-二八 アル・プラザ彦根六階)
JR東海道本線・近江鉄道「彦根駅」下車、西口より徒歩三分
http://satehikone.web.fc2.com/

一日目 「災害に晒される“いのち”」
報告者
上田 誠二(横浜高等教育専門学校)
岩田 重則(中央大学)
コメント
羽賀 祥二(名古屋大学・名誉教授)

二日目 「捧げられ祀られる対象としての“いのち”」
報告者
白岩 伸也(筑波大学・大学院生)
水谷 孝信(滋賀県・県立高等学校非常勤講師立)
コメント
矢野 智司(京都大学)

司会
須田 将司(東洋大学)(両日とも)

参加費 1,000円(資料代など)

*一日目の夜に、彦根駅前の中国料理龍鱗彦根本店にて、懇親会を開催いたします。
会費は当日お知らせいたします。
*宿泊は各自で手配をお願いいたします。
*お問い合わせ先 鈴木敦史 電子メール kemumaki614@yahoo.co.jp